食べものでないものを食べてしまう異食症とは?

異食症のイメージ

妊婦さんや精神疾患、認知症の人などに多く見られる症状

髪の毛や氷、紙といった食べものではないものを継続的に食べてしまう異食症。症状がよく見られるのが、妊娠中の女性や精神疾患を患っている人、認知症を抱えている人などです。短期間で治る場合もありますが、口にするものによっては体に重大な危険をもたらす場合も。自分では異食しているのを認識しにくいのも特徴です。

ここでは、「異食症」とは何かをはじめ、症状や特徴、診断基準などを紹介します。

異食症とは?

栄養がなく通常食べることのないものを継続的に(少なくとも1ヶ月)摂取する症状。摂食障害のひとつです。氷や毛髪、土を食べることが多く知られていて、「氷食症」、「食毛症」、「土食症」といった個別の症状名で呼ばれることもあります。異食症は、性別や年代によって様々なタイプに分けられます。妊婦・精神疾患や認知症を発症している人、子どもに多いとされています。

ちなみに、地域によっては食べものではない物質を摂取することが宗教儀式・民間療法のような文化的伝統の一部であることも。例えば米国ジョージア州には、粘土を食べる人たちがいるそうです。

妊娠中に発症しやすい

妊娠期間中の女性は、衝動的に異食行動をしてしまうことがあります。この場合、妊娠中のみに発症し、治療しなくても自然に治ることが多いようです。

鉄や亜鉛といった妊娠時に必要な栄養素の不足が原因とされています。妊娠時の体は、通常よりも多くの血液をつくるため、鉄分や亜鉛が不足しがち。妊娠中の異食症は、体が無意識に鉄分や亜鉛を補おうとして起こります。

さらに、脳への酸素供給量が不足して「お腹いっぱい」という感覚を失ったり、体の温度調節の機能が鈍くなったりすると、異食症が起こるケースも。

妊娠中の女性は栄養不足や酸素供給量の低下、温度調節が鈍くなることで、異食症の症状が起こりやすくなります。

精神疾患や認知症を患っている人に起きやすい

異食症の症状があらわれる精神疾患に、統合失調症やパーソナリティ障害が挙げられます。認知症や自閉スペクトラム症などの発達障害、知的障害の人にも見られます。

目に入るものを食べものだと判断しにくいのが原因です。そのため、摂取するものはその人の身近にあって手に入りやすいものになります。例えば、氷・毛髪・鉛筆の芯・ほこり・排泄物などです。

統合失調症の場合、異食行動は妄想や幻覚によって引き起こされます。

パーソナリティ障害だと、自傷するために針や釘を食べたり、出血するまで爪を噛んだりします。

認知症の場合は、中~重度で発症しやすい味覚障害や認識障害が異食行動の原因です。

自閉スペクトラムでは、特定の食べものの視覚や舌触りに強いこだわりを持ったときに起こることがほとんどです。

知的障害の場合、理解力や判断力、記憶力などの遅れによる認知の障害が異食症の原因といわれています。

子どもに起きやすい

2歳未満の乳幼児期は好奇心が旺盛ですが、ものの区別が上手くできないので、何でも口に入れる傾向があります。そのため、2歳未満の異食行動がすぐに問題になるわけではありません。

しかし、2歳を過ぎてから、通常は食べない、栄養のないものを継続して摂取するという症状があった時に異食症とみなされる場合があります。子どもの身近にあって手に取りやすいものが異食の対象です。

原因として、子どもがストレスをため込みやすい性格だったり、保護者によるネグレクトであったりする場合が考えられます。

異食症の行動

氷を食べる

1日に製氷皿1皿以上の氷を食べたり、体の冷えを感じても氷を食べるのを止められなかったりすると、異食症が疑われます。

髪の毛を食べる

自分の毛を抜いて飲み込んだり、線維素材の毛をむしって食べたりします。体毛を抜いて脱毛状態を引き起こす抜毛症と併存することも。子どもによく見られますが、成人になっても改善されない場合があります。

土を食べる

日常的に土を食べる習慣がない人が土を継続して食べ続けると、異食症が疑われます。子どもや妊娠中の女性によく見られる異食行動です。知的障害や味覚障害、貧血がある人にも起こりやすいといわれています。

紙を食べる

自分の近くに合って手に取りやすいティッシュや紙などを口に入れます。のどに詰まる恐れがあり、飲み込んでも胃で消化できないので注意が必要です。

異食症の症状

通常食べることのないものを継続して摂取する

異食症になった人が摂取しやすいものは、氷、毛髪、土などさまざまです。どれを食べてしまうかは、人によって異なります。食べたものによって合併症を引き起こすことも。行動が徐々にエスカレートして、明らかな体調不良を引き起こす場合は要注意です。

鉄欠乏症貧血

貧血の80~90%を占めているのが鉄欠乏性貧血です。血液中の鉄分が不足して発症します。何らかの原因で体内の鉄分が不足してヘモグロビンの合成がうまくいかなくなると、赤血球中のヘモグロビンが減り、赤血球が小さくなってしまうのです。その結果、体内の酸素供給量が減り、疲れやすい、だるいなどの症状があらわれます。

亜鉛不足

亜鉛は、舌にある味蕾の働きを活性化する成分です。そのため、亜鉛が不足すると味覚障害が起こる場合があります。免疫力の低下や爪・皮膚の異常を引き起こすことも。偏った食事や極端な摂食障害が、亜鉛の摂取量を不足させている原因だといわれています。

異食症の判断基準

医療機関では、2014年にアメリカ精神医学会が出版した「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)や、「ICD-10」の基準を使って診断することがほとんどです。DSM-5とICD-10で障害の概念に多少の違いがあり、どちらに基づいて診断するかは医師や医療機関の判断によります。 DSM-5とICD-10の異食症の診断基準は次の通りです。

DSM-5の診断基準

  1. 少なくとも1ヶ月間にわたって栄養がなく食品でないものを持続して食べる
  2. 栄養がなく食品でないものの摂取は、社会的にみて標準的な慣習ではない
  3. 食べることは文化的に容認され、社会的にみて標準的な慣習ではない
  4. 食べることが他の精神疾患や妊娠などを背景にして起こる場合、積極的な関与が妥当なほど重篤な症状が出ている

ICD-10の診断基準

  1. 栄養にならない物質を週に2回以上食べる
  2. 1ヶ月以上持続して起こっている
  3. 精神および行動の障害が症状以外に見られない
  4. 年齢が2歳以上
  5. 食べることが文化的に容認される習慣では

異食症の傾向

通常、異食症の人が食べたものが害になることはありません。しかし、口に入れたものによって身体的にさまざまな合併症を引き起こす場合があります。 合併症の症状は食べたものによりますが、

  • 胃炎
  • 胃潰瘍
  • 腸閉塞
  • 便秘
  • 中毒
  • 電解質異常
  • 鉛中毒
  • 消化管のつまり
  • 寄生虫の発生

などです。 また、食事の栄養バランスに偏りがあることで、鉄欠乏性貧血やビタミン欠乏症が生じる可能性もあります。

異食してしまう理由

食べものと誤認する

認知機能が低下すると、食べものと間違えやすいものを、食べものだと認識する場合があります。レモンのイラストが描かれていて、レモンの匂いがする「洗剤」を飲み、おまんじゅうだと思って「丸めたティッシュ」を食べるといった行動です。味覚や嗅覚が低下しているので、口に入れても間違いに気が付かないことがあります。

食事をしているという認識がある

食事時の時間帯やいつも食事を摂っている席に着くと、食べものではないものを食べることがあります。食卓に置かれた花を食べたり、食後の薬を袋ごと食べたりなど。食べものだと誤認するのではなく、今が「食べる状況」だと誤認してしまうためです。本人は「食事をしている」つもりかもしれません。

空腹である

脳の機能が低下すると、満腹を感じる機能が衰えて空腹を感じやすくなります。認知症の人に良く見られる症状です。脳が疲れを感じて、疲れを取ろうとして食べものではないものを食べる場合もあります。

ストレスを感じている

口に何かを入れて食べる行為は、安心感をもたらすもの。そのため、不安なときやさびしいときに異食が起こる場合があります。イライラしているときや、落ち着かないときにも起こりやすいようです。



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