ストレスで摂食障害になるの?

ストレス

様々なストレスで引き起こされる摂食障害

摂食障害を発症する背景には、孤独や何らかの苦痛など一人では解決できない問題や悩みに直面していることから感じるストレスがあります。

ただ「やせたい」という気持ちが強いだけでなく、「やせなければ」と強迫観念に苛まれてしまうのも、立派なストレス。社会的・心理的ストレスが引き起こす摂食障害の事例や、傾向、治療について見ていきましょう。

摂食障害を引き起こす様々なストレス

摂食障害は広義の心身症

摂食障害とストレスが密接な関係があることを物語る研究に次のようなものがあります。

ノルウェーとデンマークにおける 211 万人の女性を調査した結果によると,出生前 1 年以内に近親者の死を経験した母親から生まれた女児や,出生後 10 年以内に両親や同胞などの死を経験した女児において,その後の過食症発症のリスクが上昇することが報告されている.近親者の死による母親の食事量の減少やストレスによるHPA系の機能不全などが生じ,摂食障害を発症する可能性について考察されている。

出典:(PDF)「ストレス関連疾患としての摂食障害-病態と治療-」心身医,57(8),2017 [PDF]

家庭環境や生い立ちで、ストレスを経験している方は、過食症の発症リスクが高まることを指摘した同研究からも分かる通り、ストレスが原因となり、摂食障害を引き起こすことがあります。このことから、摂食障害は一種のストレス関連疾患として捉えられることがあります。

実際に、日本の研究者らの中には、過食や拒食などの摂食障害を「現実からの回避行動」の一つとして考える人も少なくありません。

拒食・過食にかかわらず、摂食障害の原因は、ダイエットだけではありません。ストレスを感じる現実から目をそらし、ストレスを解消するための不適切な行為として始めてしまうことがあるのです。

なぜストレスが摂食障害を引き起こすのか

では、なぜストレスが摂食障害の原因となるのでしょうか?具体的なストレス事例を交えながら、その理由について考えてみましょう。

自尊心が過度に低い

自己評価や自尊心が過度に低く、自信が持てない方にとって、食事を摂らない・過食嘔吐するなど摂食障害特有の行動によって、体重や体型をコントロールすることで自分が価値あるものだと考えるようになる傾向があります。

「痩せたね」と褒められたり、努力して体重が減っていったりする過程で自尊心が高まり、ストレスが緩和されるケースも少なくありません。

感情表現の代替手段として

感情表現が苦手、自分の気持ちを人に伝えられないなどのストレスも摂食障害へとつながることがあります。

2015 年 4 月~2016 年 3 月までに九州大学病院を受診した神経性やせ症患者を調査したところ,罹病期間の長短によらず失感情傾向は高かった.このことから,摂食障害患者は,ストレス場面などにおいて,自身の感情に気づいたり,表現したりすることが苦手であることが示唆される.したがって,適切な感情表現を身につけていくことも摂食障害の治療上,重要な要素であると考えられる

出典:(PDF)「ストレス関連疾患としての摂食障害-病態と治療-」心身医,57(8),2017 [PDF]

摂食障害を引き起こすストレスにはどんなものがある?

摂食障害を引き起こす原因となるストレスは、実に多岐に渡ります。

例えば、女子大生の無茶食い(過食)とストレスとの関連を調べた研究では、家族からの自分に対する圧迫や過干渉、両親の諍い、親子のコミュニケーション不足などが無茶食い(過食)に結びつきやすいことが指摘されていますし、危険因子として様々なストレスが指摘されています。

第一に,家族の自分に対する圧迫,過保護,過干渉や,両親の争い,親子の接触の少なさといった家族ストレスの重要性が指摘されている(Fairburn,1997)。日本においても,健常群と過食症群において家族内でのストレスイベントと BE の関連をみた研究において,過食症群においては,父親との接点の乏しさ,両親の別居・離婚および両親間の不和といった家庭内でのストレスイベントが危険因子として見出されている(大場・安藤・宮崎・川村・濱田・大野・龍田・苅部・近喰・吾郷・小牧・石川,2002)。 しかし,BE にかかわるストレッサーとしては,大学への入学,卒業,大学での環境,異性関係,食事の供給など,自分自身の生活環境から受ける日常生活上の心身ストレスの重要性も指摘されており(Dickstein, 1989),BE を促すストレスの内容に関しては検討の余地が残されている。

出典:(PDF)「女子大生のダイエット行動とストレスがBinge Eatingに及ぼす影響」心理学研究,80(2),2009 [PDF]

この研究からも分かる通り、摂食障害の背景には、患者さんそれぞれによって、異なる原因が存在し、その原因(ストレス)に対して、適切に対処していくことが大切となるのです。

ストレス関連疾患としての摂食障害の治療

このように、ストレス関連疾患として起こり得る摂食障害の治療には、ストレス因子を単に取り除くだけでなく、ストレスへの対処法を本人とともに見出していくことが大切となります。

また、ストレス環境を改善し、摂食障害を克服するための環境づくりを、家族や周囲のサポートとともに取り組んでいく必要があるのです。

不安を解消する代替手段を見つける

例えば、患者さんがストレスへの対処法を学ぶ手段の一つとして、不安を解消する代替手段を見つけることも治療で用いられることがあります。

いかなるときも 3 食をリズムよく摂取することを促し,お笑いを観ることが好きであった患者に対し,不安なときはそのDVD を視聴するように促した.また,母親を含めた面接の中で,母親は面接で,患者のできていないところに着目し,その様子を主治医に語ることが多かった.感情表出の乏しかった患者であったが,ある外来面接の中で,悪いところばかりを指摘する母親に対して,「大げさに言うところがいや!」と初めて不満を表出した.患者に対しては,率直な思いを,感情を交え言語化できたことを十分に評価した.

出典:(PDF)「ストレス関連疾患としての摂食障害-病態と治療-」心身医,57(8),2017 [PDF]

対人関係の悩みへの具体的な対処法を考える

摂食障害の治療の一つである認知療法により、ストレスへの対処法や考え方をより良い方向に導くことは、ストレスをなくすのではなく、ストレスへの対処方法を学ぶという点でも大切です。

例えば、個人認知療法により、具体的に対人関係に対する悩みをカウンセラーや医師とともに考え、対策を考えることは治療法でも用いられる手法です。

個人認知療法は週 1 回30 分で行った .食行動のみならず,家族を含めた対人関係にも焦 点を当てて行った .対人関係について具体的な場而を取り上げ,そこで認知の歪みを検討し修正した上で,具体的な対処法を考えた.さらに必要であればリハーサルを行ったり,宿題を出すことで日常生活や現実の対人関係へフィードバックさせるという方法をとった 〜中略〜 個人認知療法10回終了後,POMSの抑うつ-落ち込み,怒り-敵意の得点が開始前と比較して有意に減少した.また、CISSの情緒優先対処の得点が開始前と比較して有意に減少した.

出典:(PDF)「摂食障害患者における感情状態とストレス対処行動 : 治療的介入との関係について」心身医,40(5),2000 [PDF]

このほも、かに感情表現・人付き合いの方法を学ぶ、肥満恐怖を解消する、原因ストレスを周囲のサポートともに取り除く・減らすことなども治療の一環として行われます。

参考文献

[1]出典: (PDF) 「ストレス関連疾患としての摂食障害-病態と治療-」心身医,57(8),2017 [PDF]



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