深刻な状況を回避する、入院治療と行動療法
摂食障害を放っておくと、
命に危険が及ぶこともあります。
過食症にみられる極端な体重へのこだわりからくる不安定な精神状態や、拒食症からくる極度の栄養不良による判断力・思考力の低下は、命に係わる状況を招きます。
このような場合に有効な治療法が、入院治療と行動療法です。
入院治療が必要なケース
不安定な精神状態や、著しい栄養不良が原因となっておこる判断力・思考力の低下が起きている場合は、入院によって積極的に治療を行うことが必要です。
また、誤った認識やそれに基づく食生活を戻すトレーニングを家庭で行う家族と患者さんでトラブルになる、などの場合は入院治療がます。
入院治療が必要な拒食症
拒食症の患者さんは、衰弱の激しい状態でも、元気を装うことがあります。
- 体重の著しい減少
- 意識障害
- 歩行困難
上記ような症状がある場合は、突然の体調の急変など見過ごすと、命に係わるので、強制的な栄養補給が必要です。
また、食事の量がそれほど減ってはいなくても、トイレなど人の見ていないところで吐いている場合もあるので、きめ細かな見守りが重要です。
上記のような重篤な症状が表出していない場合でも、以下のような危険もあります。
- 重い電解質異常
動悸、けいれん、心不全などが起こる可能性がある
- 極度の低血糖
脳の機能がストップし、脳死に至ることもある
さらに、うつや自傷などがある患者さんも入院治療による管理が必要です。
入院治療が必要な過食症
過食症は、死に至るケースは少ないように思われがちですが、過食嘔吐や下剤による過度の排泄をしていなくとも、たいていは重い電解質異常や低血糖状態に陥っています。その場合は、拒食症と同様に、命の危険があります。
また、うつや自傷などが見られることもあります。そのような場合には入院治療が必要です。
入院治療の詳細
入院治療では、行動療法、または行動制限療法とよばれる治療法を行うことが一般的です。
拒食症や過食症の患者さんの特徴として、太ることを極端に嫌がる、太った姿を嫌悪するといった傾向があります。少しでも食べると太る、という誤った思い込みに取りつかれ、なかなか正常な精神状態に戻すことができません。
その上、酷く痩せたり栄養不良になったりして無気力や判断力が低下すると、さらに深刻な状況へと進行します。
そこで、強い力で患者さんを引っ張り、誤った思い込みを正しく修正し、正常な食生活に戻すトレーニングを行う必要があります。これが行動療法です。
具体的には、以下のような治療を行います。
まず、行動範囲を制限された状態で、少ない食事を三食きちんと完食するトレーニングをします。
この時、運動、テレビ、面会や電話などの外部の人との連絡は一切禁止されています。
完食できるようになり体重が目標値まで増えたら、次のステップです。
食事の量を少し増やし、行動の範囲を少し広げる許可が出されます。
このステップをクリアしたら、さらに食事の量を増やし体重アップを目指します。
このステップを複数回繰り返すことで、健康な状態へと導いていきます。