摂食障害のチューイングとは?
「噛んで吐き出すから大丈夫」という誤った認識が過食障害を加速させる!?
噛み吐き行為とも呼ばれるチューイングは、食べ物を口の中に入れて噛むだけで、飲み込まずに吐き出すという行為を指します。確かに体重を増やしたくないから…と行うチューイングは食べ物を飲み込んでいないために過食の定義を満たさないものの、過食や過食嘔吐など過食症の行動とともに現れることが多い症状です。
チューイングがもたらす体への影響や、チューイングをしてしまう原因、チューイングを克服するための治療法をご紹介します。
摂食障害におけるチューイングとは?
チューイングは食べ物を噛むだけで吐き出す行為
チューイングは、過食、嘔吐、ダラダラ食いなどと並んで食行動異常の一つといてあげられる症状の一つです。
食べ物を口に含んで噛んだ後に、ビニール袋などに吐き出す行為は一見合理的な方法のように思えてしまうかもしれませんが、体にはさまざまな害を及ぼす摂食障害の問題行動と言えます。
チューイングが及ぼす体への害
チューイングは、一見食べたものを飲み込まずに吐き出すために、過食嘔吐のような胃酸逆流による歯の侵食など身体への害が少ない行動のように見えるかもしれません。
しかしながらチューイングは食べ物が消化管まで届かないため、体の消化器官の機能が低下。便秘になりやすくなります。また、チューイング習慣が続く中で、突然の過食につながり、絶食―過食のサイクルを繰り返し、身体に負担をかけることも大いにありえます。
加えて、チューイングをすることで唾液腺が酷使され、顔の耳の下あたりが下膨れのようにむくんでしまうケースも考えられます。痩せたい、すっきりとした見た目になりたいと思っていても、このように顔がむくんでしまえばかえって逆効果。より一層ストレスが蓄積されることとなるでしょう。
また、チューイングをする摂食障害患者さんの多くが、過食・過食嘔吐などを合併しているケースが多く、強迫性障害の合併も認められることを指摘するクリニックもあります。[1]
チューイングをする心理的背景・原因
チューイングをする背景にあるのは、「食べたいけれど太りたくない」という心理状態です。
chewing spitting syndromeは主に思春期以後の患者に見られていたが,小児期においても出現するようになっており,当外来では10歳から見られている。 食べずに我慢するA.Nに 比べるとB.Nでは"食べたい・痩せたい欲求"を満たすことができるが,そのためには浄化行動を行わねばならない。その点,chewingspittingsyndrorneでは食べたい・痩せたい欲求を一時的であれ浄化行動なしに満たすことができ,飽食社会を背景とした摂食障害として今後の増加に留意が必要であろう。
拒食症が「食べずに我慢する」摂食障害である一方で、過食症は痩せたいけれど食べたいという欲求を同時に満たすための過食嘔吐などの症状が見られる摂食障害です。チューイングも過食嘔吐と同様に、食べたい/痩せたい(太りたくない)願望を満たす行為といえるのです。
チューイングを克服するには?
チューイング行為を克服するための治療方法は、過食症の治療法と合わせて強迫性障害の治療も有効と考えられます。
チューイングの克服のために考えられる治療法としては、薬物療法、心理療法、場合によっては入院治療も検討されることとなるでしょう。
このように、チューイングはダイエット目的など軽い気持ちで始めたとしても、過食症を加速させたり、体に負担をかけたりと、できれば避けたい食異常行動です。
摂食障害の治療の一環として、チューイングを過食嘔吐の代替行為として一時的に用いることもあるようですが、だからと言って軽い気持ちでチューイングを始めることは避けたほうがいいでしょう。
チューイングは立派な摂食障害の行動の一つであることを認識して、克服への一歩を踏み出しましょう。