新たな摂食障害「オルトレキシア(不健康食拒食症)」とは?
オーガニックブームが広がるアメリカをはじめとし、先進国で増えていると言われるオルトレキシアは、ギリシャ語の「orthos(意:適切な)」と「orexia(意:食欲)」という言葉が由来となっています。健康的な食物を食べなければならないという異常な強迫観念があることが特徴の摂食障害です。オルトレキシアの存在を指摘し、名付けたのはアメリカの医師スティーブン・ブラッドマン博士。1997年のことでした[1]。提唱されてから10数年しか経っていないオルトレキシアは、日本でもまだまだ認知度が低い摂食障害です。
オルトレキシアの特徴
イタリアの研究者らが2004年に海外の医学誌『Eating and Weight Disorders』に発表したオルトレキシアに関する予備的研究[2]では、オルトレキシアを「健康な食品・食べ物に異常なまでに執着する」疾患と定義づけています。
拒食症や過食症と異なり、オルトレキシアは単純に摂取カロリーや量を過剰もしくは極端に少ない量に抑えてしまうかわりに、「健康に良くないものは食べない」「糖質制限のために小麦系製品は食べない」など、行きすぎた食への健康志向が却って体にダメージを与えてしまう点です。
オルトレキシアの症状
強迫神経症による摂食障害としても捉えられるオルトレキシア。特徴的な行動としては、健康的な食事をすることにこだわる一方で、「体に悪い」とされる食べ物は徹底的に排除し、食べる幸せや人付き合い、社会生活などを犠牲にしてまで健康的な食生活を貫こうとします。[2]
オルトレキシアは4段階に分けて説明することができます。最初の段階では「毎日の食事で何を食べるか」ということを徹底的に考え始めます。次のステージでは、食べものの原材料や含まれている成分が気になり、批判的な視点も持ちながら情報を集め始めます。そして、次の段階で自分が口にするものは健康的に害がない原料と製法で作られていなければならないと考えます。最後のステージでは、1〜3のステージで自分が「これが健康だ」と思えたものだけを食べなければならないという強迫観念にかられ、必要以上に食にこだわるようになるのです。
オルトレキシアで特徴的なのが、これらの行動を本人は至って真剣に「正しいことをしている」と感じている点です。場合によっては、偏った食生活となり栄養失調など命の危険にまで及ぶ可能性もあります。
健康的な生活や食に興味を持つこともいいですが、それが「〜でなければならない」と自分を縛るようになれば、知らず知らずのうちにあなたの生活と健康を蝕んでいるかもしれません。
ときには一度立ち止まって、自分が信じている健康法が果たして本当に正しいものなのかどうかを、他の人から客観的に意見を聞いてみてもいいのではないでしょうか。