容姿の欠点で悩んでしまう身体醜形障害とは?
人と比べて、自分の容姿を嫌悪し、深く悩んでしまう病気です
外見の些細なコンプレックスを重く受け止め、思い悩んでしまい、日常生活に支障をきたすほどの精神的苦痛を引き起こしてしまう「身体醜形障害」。摂食障害とも深いつながりがあり、自分の容姿を過剰に低く評価していることが原因です。
ここでは、身体醜形障害の症状や治療法、判断基準についてご紹介していきます。
身体醜形障害とは?
身体醜形障害は、1日何時間も肉体的なコンプレックスについて考えこんでしまい、鏡に映る自分の姿に嫌悪感を持ってしまう精神疾患のことをいいます。「BDD(body dysmorphic disorder)」とも呼ばれ、日本では、1990年後半から増加傾向にある病気です。拒食症や過食症などの「強迫性障害」との関連が深く、自己否定感が強い方や完璧主義の方、自己不信に陥りやすい方がかかりやすいといわれています。
うつ病や引きこもりを併発する可能性が高く、統合失調症の前ぶれとしてあらわれる場合も。
患者が抱えてしまう肉体的コンプレックスは、本人の思い込みや妄想であることが多いのも特徴です。他人からすると、些細なことで思い悩んでいるように見え、理解を得られないことも。
また、「周りの人に励まされたり、褒められたりしたら気が楽になる」というような、単純な問題ではないため、一人で思い悩まずにクリニックに相談するようにしましょう。
参考:身体醜形障害(日本小児心身医学会)
http://www.jisinsin.jp/detail/11-murayama.html
身体醜形障害の行動
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鏡を異常に見る、もしくは極端に鏡を見るのを避ける
何度も鏡を確認し、自分を見続ける反面、鏡やガラスなどの反射物を避け、自分の肉体的コンプレックスを見たがらないという、相反する行動をとります。
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カラダの気になる部分を隠す
「コンプレックスは誰もが持っているもの」と頭では理解できても極度に気にしてしまうため、帽子・サングラス・マスクなどでコンプレックスを隠そうとします。
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人と接するのを避ける
他人に姿を見られることが嫌になり、過剰に人目を避けるようになります。ひどい場合は引きこもり状態になることもあるでしょう。
参考:大学生における身体不満足感と身体醜形懸念(弘前大学教育学部)
https://hirosaki.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2475&item_no=1&page_id=13&block_id=21
身体醜形障害の症状
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自分の容姿を過剰に低く評価する
過去にあったショックな経験やコンプレックスから、自分の容姿を過度に低く評価してしまうという精神的症状があらわれます。ひどくなると、自分の容姿が常に気になってどうしようもなくなり、ネガティブな思考のループに陥って、うつ病にまで発展することも。
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自殺衝動
重症になると、自殺に至る危険性もあります。誰にも打ち明けることができず、一人で悩んでしまうことが多くなりがち。ひどくなる前に医師に相談しましょう。
身体醜形障害の治療法
身体醜形障害の治療法は、薬物治療法と認知行動療法の2つです。
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薬物療法
フロボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラムという薬が処方されます。「抗うつ薬」として医院にて使用されている薬です。
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認知行動療法
身体醜形障害の症状や治療法について学びながら、曝露(ばくろ)と反応妨害の2つの療法を組み合わせた「曝露反応妨害」で、今までの思考が柔軟になるよう誘導。身体的コンプレックスを隠さずに外出してもらうなど、少しずつ刺激に慣れながら回復を図っていきます。
身体醜形障害の判断基準
- ボディイメージの障害
他人からは問題がないのに、自分を「醜い」と主観的に評価している場合。主観的評価と客観的評価に大きなズレが生じている場合、身体的醜形障害と診断します。 - 確認行動
「繰り返し自分の姿を鏡などで確認してしまう」という行動。他にも、過剰な身だしなみや皮膚むしり、「大丈夫だよね?」と他人に何度も確認する行動などが挙げられます。 - 生活への支障
「外見へのとらわれ」によって、生活に大きな支障が生じている場合、問題となります。例えば、「醜い」という不安から「学校にいけない」「外出ができない」「人とコミュニケーションがとれない」など。 - 他の疾患の除外
ボディイメージの障害から生じる疾患に「摂食障害」がありますが、摂食障害の診断基準を満たす場合は、診断名は摂食障害になります。この項目は、医師でないと判断が難しいものです。