摂食障害のパージングとは?

パージング

過食との繰り返しが習慣化するパージング(浄化行動)

パージングとは、英語でpursing(意:浄化する)と表記される摂食障害に見られる行動の一つです。過食に伴い見られる行動で、嘔吐や下剤乱用で食べ物を体外に排出する行動を指します[1]。

過食と排出を繰り返すタイプの過食症に分類されるパージング。一体どんな原因でパージングをしてしまい、パージングが及ぼす害にはどんなものがあるのかを見ていきましょう。

過食症の問題行動の一つである「パージング」

「なかったこと」にしようという気持ちが生むパージング

摂食障害の中でも、過食(無茶食い)をする過食症は、太る恐怖心が原因でパージングを行い、過食をまた繰り返すという悪循環が見られることがしばしばあります。

ストレス解消など様々な原因で過食をした際に、パージングをすれば「なかったことになる」と安心感を得て、過食後に嘔吐や下剤乱用などのパージングを繰り返す悪循環は、摂食障害を悪化させるだけでなく、様々な合併症を引き起こします。

過食に至る理由を Mitchellらは緊張感と不安感が87%で最も高率であると報告しており,JohnsonとLarsonは過食後のパージングで安心感が得られると報告している。〜中略〜現代は食物が豊富で「食べたい」時にいつでも食べられるために,気晴らし食い」は簡単なストレス解消手段といえる。そこでストレスが加わったり,不安感が生じると最も簡単な「気晴らし食い」によって解消するが,太る恐怖から自己誘発嘔吐や下剤使用が始まる。このサイクルが始まると心身ともに過食嘔吐に依存し,吐くために食べるという状態が生じてくる。こうして摂食障害が発症する。以上をまとめると,心理的ストレスを気晴らし食いで解消するが,食べた後に太る恐怖から自発嘔吐,下剤使用が始まり,摂食障害が発症するものといえる。

出典:(PDF)「摂食障害患者における発症状況分類とその特徴についての検討」信州医学雑誌 47(4): 297-307(1999) [PDF]

パージングが及ぼす体への害

パージングの代表的な行動としてあげられるのが、過食後の自己誘発性嘔吐と下剤乱用の2つです。ここではそれぞれのパージングが、どのような身体的悪影響を与えるのかを見ていきましょう。

自己誘発性嘔吐の害

自己誘発性嘔吐とは、食べた後に指を喉に突っ込んで無理やり食べたものを吐き出す行為です。過食とセットで語られることの多いパージングです。食べた後に吐き出してしまえば「食べなかったことになる」と始めた行動が習慣化されてしまうことも少なくありません。

過食嘔吐は、吐きダコが親指の付け根にできるだけでなく、唾液腺に負担をかけることから唾液腺の腫れによる顔のむくみ、胃酸の逆流による歯の侵蝕などの弊害がみられます。

例えば、自己誘発性嘔吐を週5〜11回程度繰り返す患者さんを対象に行った口腔内状態の調査では、「歯がしみる」「歯が痛い」といた症状を訴えた方は全体の約半数。また、耳下線のむくみ(肥大)がみられた人は12人中1人の割合で確認されています[2]。

胃酸の逆流による歯の侵蝕は、自己誘発性嘔吐をする期間が長ければ長いほどその傾向は強く、虫歯が出来やすかったり、歯が溶けてボロボロになったりという影響は避けられません。

下剤乱用の害

食べた後に下剤によって強制的に食べたものを排出するパージングは、大量の体液の損失リスクや消化器官への負担など様々なリスクが考えられます。

実際に18歳で摂食障害を発症した患者さんの中には、下剤を大量に乱用し、体液が過剰に損失され、高CI血症性代謝性アシドーシスを発現。骨軟化症も発症し、歩行障害まで見られたケースが報告されています。どう症例では、一旦は入院治療によって症状が改善したものの、退院後に、再び慢性腎不全や呼吸困難などの合併症を引き起こしたと報告されています[3]。

このほかにも下剤乱用に伴い酸性尿酸アンモニウム結石を生じた症例なども報告されるなど、下剤乱用の弊害については枚挙にいとまがありません。

パージングの心理的背景・原因

過食症などの摂食障害でパージングをしてしまう原因、心理的背景は、先にも少し触れたとおり「食べたことをなかったことにしたい」との心理状態が働いていることが挙げられます。

しかしながら、パージングは排出して終わりではなく、排出後に空腹感に襲われたり、自己嫌悪に苛まれたりして、また過食を繰り返してしまうケースが多いもの。

パージングは摂食障害の悪循環の一つのフェーズと言えるのです。

パージングの心理的背景・原因

パージングを克服するには、薬物療法や心理療法などが治療現場では用いられています。

例えば認知行動療法では、パージングが与える体への悪影響を知ることで、パージング行動がいかに意味のないことかを知るなどの教育的アプローチも治療の一環として用いられます。

体重,食行動に関する教育的なアプローチを行う。①体重について,健康な体重(統計学 的に最も寿命が長い体重)は BMI が 21 ~ 22 で あり,若者の求めているのは美容体重である。3 kg ぐらいの体重変動は混乱した食生活から考え て当然である。低体重により胃の動きが遅くな り,いつまでも胃に食物がたまることや,そのこ とで,抑うつ,食事へのとらわれがさらに強くな ることを説明する。しかし,低体重の患者にとっ ての目標体重は BMI 19.0~19.9 の範囲内である。②下剤乱用の身体的影響を教育する。顔の形を気にしているのに顎下腺が腫れて下ぶくれとなること,前歯の裏のエナメル質がはがれること,齲歯がひどいこと,など。③自己誘発性嘔吐,下剤乱用が体重コントロールとして無意味であることを教育する。全部を吐くことはできないこと。下剤乱用は利尿剤と同じで,脱水は起こすが,カロリー吸収阻止には無効なこと。

出典:(PDF)「摂食障害の認知行動療法」総合病院精神医学, 2011[PDF]

また、過食症全般の治療と同じように、パージングは心身両面からの働きかけが何よりも大切です。

パージングによってダメージを受けた体を回復させるための治療も、必要です。

[1]出典: e-ヘルスネット「浄化行動/パージング」2018年2月21日確認

[2]出典: (PDF)「自己誘発性嘔吐を伴った摂食障害患者の口腔内状態 : 予備的調査成績について」心身医学, 2001[PDF]

[3]出典: (PDF) 「長期間の過食・嘔吐と下剤乱用が原因となって腎不全と呼吸不全を呈した摂食障害の1例」心身医学, 1995 [PDF]



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