家族が抱える原因を解決する、家族療法とは?
摂食障害の治療では、
周囲や家族の協力がとても大切です。
摂食障害には、心の問題が深くかかわっていることは、疑いの余地がありません。そして、心の問題は、もっとも近くにいる家族が原因となっていることもしばしばです。
家族療法では、まず家族との関わりの中に原因がないかを探り、それを解決することから始めます。
さらに、家族はどのようなサポートをすればいいかといったところにも目を向けていくのが、家族療法です。
家族と患者さんとの関わりを見直す
家族の問題が摂食障害の患者さんの心に負担をかけている場合は、それを解決する必要があります。
患者さんへのカウンセリングの中で、家族の中にある原因が何であるかがわかることもありますが、摂食障害の患者さんを抱える家族は、「何がいけなかったのだろうか」と悩み、原因がわからないこともよくあります。
そのような場合に、カウンセラーなどの第三者が入り、冷静に整理し、解決へと導いていきます。
摂食障害は、食事に関する育て方や環境が直接的な原因となって起こるものではなく、親の過干渉や過保護、両親の不仲、父親と母親の考え方が大きく異なる、身体的な特徴について日常的にからかわれるなど、日々少しずつ蓄積したストレスが原因となります。
そういった内容から、患者さんに心理的ストレスを与えていることはないかを、家族でもう一度見直してみることが必要です。家族なので性格などもよく理解していると思っていても、思わぬところに問題が隠れていることがあります。
家族療法は、担当医やカウンセラーが、摂食障害を家族の問題と捉え、問題の解決に向けて家族全体をサポートしながら、患者さんの病気の克服を目指す治療法です。
摂食障害を家族が理解する
食べる、という行為は誰もが普通に行っている行動です。そのため、摂食障害ではない人たちにとっては患者さんの行動は理解できません。しかし、患者さんから見ると、普通に食べるという行動が異常に見えてしまうというのが、摂食障害です。
そのギャップに気付かないまま、家族は無理に食べさせようとしたり、否定的な言葉をぶつけてしまうことがあります。苦しんでいる患者さんにとっては、こういった行動は優しさや愛情ではなく、自分自身を否定されていることに他ならないのです。こういったことが繰り返される中で、患者さんと家族の間には大きな溝ができて、病気もさらに悪化していきます。
そこで家族療法では、摂食障害とはどういう病気か、患者さんはどのような心理状態にあるのかを家族に理解してもらうことから始めます。
また、患者さんは、家族の中で一番長くつきあっている母親に対し、苦しさや不安、病気になった責任をぶつける場合がほとんどです。そのため、母親は家族の中でも特に精神的な負担が大きく、自分が産み育てた子供であることから自責の念にかられることも多いです。
このことから、家族療法では、母親と患者さんの関係に重きを置いて、その二人を取り巻く家族にも理解と協力を求め、サポートしてもらうことを目指します。
治そう、治したいと思う家族と、治りたい、わかってくれないと思う患者さんの、それぞれの葛藤に目を向け、歩み寄る方法を手助けするのが家族療法の目的です。