原因を探る、心理療法(カウンセリング)
原因がどこにあるのかを探ることが、
摂食障害治療の第一歩です。
心理療法とは、精神療法(個人精神療法)、認知療法、対人関係療法ともいわれる治療法です。
摂食障害の原因や引き金となっている精神的な問題を探りながら、摂食障害についての間違った思い込みを排除し、治りたいという意欲をもたせることなどを目的として、カウンセリングを重ねます。
薬物療法を併用するのが一般的ですが、最近は、栄養療法との連携が注目されています。
過食や拒食の原因をみつけるカウンセリング
心理療法は、一般的にはカウンセリングという名称で知られています。カウンセリングは、専門の施設やクリニックなどでカウンセラーや精神科医と患者さんが1対1で行います。
摂食障害では、その症状の裏に精神的な問題を抱えていることが少なくありません。患者さん自身がそれに気づいていないことも多く、これらの問題がストレスとなって過食や拒食といった症状を引き起こしています。
そこで、カウンセリングによって、この問題を表面化して整理し、問題への対処法を探りながら摂食障害を改善していきます。
症状の背景には、慢性的な不安を抱えていることが多いと言われています。
その多くは、自分をうまくコントロールできないというストレスを、摂食という基本的な行為のコントロールによって満足させようという気持ちの表れともいわれます。そして、患者は常に何かに追われている、あるいは恐怖を感じているような精神状態に置かれているといえます。
心理療法は、こういった患者さんの強迫的な精神状態を改善するために、内側からアプローチしていく治療法です。
心理療法の治療内容
それでは、心理療法ではどのようにして治療していくのでしょうか。
まず、担当のカウンセラーや精神科医に患者さんが今どういう状態かを自分で説明することから始まります。
- いつから何がきっかけでこの病気が始まったのか
- 過食なのか拒食なのか
- 自分の体型や体重をどう思っているか
- 食事をしたいか、したくないか、自分にとって食事とはどのようなものか
- 家族との関係や周囲との関係
- 今自分が感じている悩み
できるだけ細かいことまで聞き取り、摂食障害の裏に隠れている問題を探り、解決の糸口を見つけていきます。
はじめはあまり話すことのできない患者さんでも、回数を重ねるごとに信頼関係が生まれ、徐々に心を開いてより深く話してくれたり、それまで患者さん自身が気付かなかったことに気付くことがあります。
また、摂食障害の人の多くは、自分の体型や体重、そして食事に対して誤った認識を持っています。このような誤った思い込みを取り除き正していくことは、治療の大きなポイントとなります。
患者さんのほとんどは、「治りたい」という気持ちを心の奥には持っているので、摂食障害はどういった病気なのかを正しく理解させ、治そうという気持ちを前向きに持つよう誘導していくのが心理療法の大きな目的といえます。
心理療法を行っているクリニックは全国各地にあります。
クリニック・病院によって、その後のメンタルトレーニングも含めて、対人関係療法、認知療法、精神療法などと呼んでいますが、いずれも心理療法のひとつです。
心理療法によって、患者さん自身が自分の状況を整理し、栄養療法や家族療法など、最新の治療方法への糸口をみつけることができます。
有効な心理療法は?
過食症には?
神経性過食症には認知行動療法が効果的とされています。
認知行動療法とは、担当医やカウンセラーとともに自分の行動を確認して確かめていく療法です。これは、幾つかの段階をへて治療を進めることになりますが、特徴的なのは、食事日誌などを通じて、自分で食べ過ぎたと思った理由などを自ら気付かせてあげることです。併せて、体重の管理や食事行動に対する教育的な情報共有も行われます。これによって、治療を受ける人は、自分の食に対する認識からそれまでのものと違う理解になっていきます。
拒食症には?
神経性やせ症という名称の通称拒食症には、色々な理由から、明確に標準化された心理的な対応が定まっていません。
医療的な処置が必要だったり、体重が増えることに強く着目してしまい、心理的なケアについては何が効果的なのかが確立していないことが背景にあるようです。また、思春期なのか、妊娠中もしくは産後なのかといった具合に、患者さんの置かれた立場などによっても優先される内容が変わるため、患者の症状が慢性化することもあり、少し体重が増えてもすぐに治療を中断する必要に迫られることもあるそうです。神経性やせ症(拒食症)には、効果的とされている栄養療法を行うことをおすすめします。
参考:みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_eat.html
参考:摂食障害情報ポータルサイト(摂食障害全国基幹センター)
http://www.edportal.jp/pro/treatment.html#a01
参考:摂食障害の認知行動療法(The Japanese Society of General Hospital Psychiatry Vol.23,No.4)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjghp/23/4/23_355/_pdf